電気電子工学コースとは?
長崎総合科学大学・工学部・電気電子工学コースは、古くは「電気工学科」の頃から続く、50年余りの歴史を持つコースとなります。電気工学・電子工学の基礎から応用まで一貫した教育により、時代のニーズに応えるスペシャリストの育成を行っています。
電気工学とは、電気をエネルギーや動力として使うための工学です。電気を作り出し、効率よく使用するための技術を追求します。発電所の技術や電気自動車や電車のモーター、送配電の技術がこれにあたります。最近では太陽光発電の技術など、再生可能エネルギー(使用しても自然により環境・エネルギーが再生され、石油のように枯渇したり二酸化炭素の放出といった問題を起こさない)の有効利用を研究する学問としても注目されています。
電子工学は、電気工学と少し異なり、いわば電気を情報として利用することを追求する学問です。たとえばデジタル回路やコンピュータ技術、有線・無線通信がこれにあたります。こちらも今は昔ながらのコンピュータの仕組みを学ぶだけでなく、インターネットの技術とも密接に絡み、たとえば IoT(Internet of Things) のように身の回りのものを全てインターネットに繋ぐことで、世の中をより便利にするような研究等にシフトしつつあります。本コースでもそのためのプログラミング技術、IT(情報技術)、モノをコンピュータで操る技術などを多く学びます。
何故電気と電子が一緒のコースなのか、と思う方もいるかもしれません。多くの大学では電子工学は情報工学として電気工学関連とは切り離す方向に向かっています。さらに言えば電気工学科を廃止する動きもあります。しかし、本コースでは、特にこれからの未来を見据えた上で、敢えてこれらを「同時に学ぶべきもの」ととらえています。例えば、自動運転の自動車を作ることを考えて下さい。バッテリーとモーターを効率よく利用する技術は電気工学ですが、バッテリーの充放電をコンピュータで制御したり、カメラとセンサーを駆使して、歩行者や交通情報を人口知能に検知させながら自動制御する技術は電子工学です。このように、一貫してこれらの技術の基礎を身に着けることが、これからの社会で大きく役立つと考えます。自動運転が最も良い例ですが、今後益々世の中が電気化、電子化していく中で、電気工学と電子工学の融合が如何に重要になるか、明らかではないでしょうか。
電気電子工学コースではさらに、世界に進出し世界的なプロジェクトを支える研究も行っています。スイスとフランスの国境地帯にある世界最大規模の素粒子物理学の研究所であるCERN(欧州原子核研究機構)で、宇宙の初期状態を再現する高エネルギー実験の国際共同研究を推進しています。このような研究は、何百万個ものセンサーデータを常時見張りながら新たな物理現象を探る必要があります。そのためには、巨大なシステムを支える高度な電子回路技術とIT技術が欠かせません。本コースは1990年代より世界のいくつもの巨大物理実験プロジェクトに貢献しています。
就職・進学
本コースでは、大学1年生からOB/OGによる講話や座談会をはじめとしたキャリア教育を実施しています。電力システム・エネルギー分野、エレクトロニクス分野、医療電子工学分野など、電気電子技術者の活躍する場は広く、自分の職業観にあわせて希望する分野への就職が可能です。
さらに、本コースの長い歴史の中で卒業した多くのOBが多くの企業で活躍していることから、本コースの教育の質と卒業生に対して多くの企業で一定の評価と信頼をいただいています。
このため、就職率(就職希望者に対する内定取得者の割合)は、ほとんど100%を達成しています。これは徹底した就職活動指導によることだけでなく、電気電子工学という学問が現代社会において必要不可欠なものであり、景気の良し悪しに一切左右されることなく人材が必要とされていることを物語っています。この傾向は社会が電気を使い続ける限り変わることがないと言えるでしょう。
最近の就職希望者の内定率
OB講話の風景
- 2007年: 100%
- 2008年: 100%
- 2009年: 92%
- 2010年: 100%
- 2011年: 100%
- 2012年: 100%
- 2013年: 100%
- 2014年: 100%
- 2015年: 100%
- 2016年: 100%
- 2017年: 100%
- 2018年: 100%
- 2019年: 100%
- 2020年: 100%
大学院への進学
学部を卒業後、大学院へ進学することが可能です。大学院修士課程は通常2年のコースとなっており、1年間の卒業研究よりもはるかに物事を深く追求します。
大学4年間ばかりでなく、何故大学院へまで行く必要があるかとよく聞かれます。大学院は、大学のように講義を受けるのが主ではなく、自ら問題を提議し、新たな分野を切り開くような研究者を育てます。10年ほど前までは大学院への進学は一般的ではありませんでした。しかし現在、大学院への進学者数は日本全国で毎年増加の一途を辿っています。特に大手企業の研究職などでは最近は学部卒業よりも大学院卒を好んで採用する傾向が強くなっています。企業で最先端の研究をしたり、科学研究分野に進むためには今や必須の学位というわけです。
最近の電気電子工学コースからの大学院への進学率
- 2015年: 20%
- 2016年: 10%
- 2017年: 20%
- 2018年: 40%
- 2019年: 10%
- 2020年: 30%
資格
電気電子工学コースでは、受講単位に応じて、電気電子関連の国家資格の取得もしくは一部国家試験免除を受けることができます。これらの資格を取得すると、就職活動において有益でしょう。例えば無線関連の資格を持つと、船舶関連や放送関連の職につきたい場合、有利となることがあります。以下がその資格です。
- 電気主任技術者
(必要単位取得後、実務経験1年以上で3種、3年以上で2種、5年以上で1種) - 第1級陸上特殊無線技士(必要単位取得後、資格申請)
- 第2級海上特殊無線技士(必要単位取得後、資格申請)
- 第1級陸上無線技士(試験科目4科目のうち「無線工学の基礎」免除)
- 第2種電気工事士(必要単位取得後、筆記試験免除)
- 技術士(工学部門予備試験免除)
- 高等学校教諭一種免許状(工業)